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与野党逆転の重要性


硬直化、形式化、さらに与党と行政の癒着といった国会の構造は、第2次世界大戦後政権交替がなく、 一党支配が50年近く続いていることと無関係ではあるまい。

私自身がジャーナリストとして国会を見てきた25年を振り返ってみても、安保の問題やロッキード、リクルートと、野党による追求はあるが、 与党の政権能力に反比例して野党の政権担当能力は落ちてきているといえるように思う。その背景を探るために、シャドウ・キャビネットの問題を考えてみたい。

イギリスでは昔からシャドウ・キャビネット(影の内閣)の制度がありそれを模して、今回社会党もシャドウ・キャビネットを発足させた。 しかし、イギリスのシャドウ・キャビネットとは大きな差がある。

つまりイギリスではシャドウと言えども予算を持ち、調査費も与党以上に支給されているからである。 与党は行政からの情報そして行政の調査能力を持つが、シャドウにはそれがないから、多額の調査費が与えられているのだという。

それはいつでも表の内閣になれるだけの力を蓄えるためなのである。言ってみれば、ベンチに座っている選手がウォーミングアップしながら待機している状態である。 カナダのシャドウ・キャビネットの副首相は「カナダにおいてシャドウ・キャビネットが機能しているのは60人のスタッフ、部屋、そして資金があるからだ。」と証言している。

これらの国々と較べると、戦後政権交代がほとんどなかった日本の政治構造は、野党の力を極端に弱くしてしまったと言える。 万年ベンチの野党議員は、秘書2名、限られた調査費の中で、与党に迫る鋭い質問を投げつけなけらばならない。

こうして見てくると、与党が野党になる可能性が全くないと思えるような事態が国会の議論を形式化させ、国民から国会を見えなくさせているのであり、 こうした構造をあばくことこそジャーナリズムの任務であろう。もっと民主的な与野党に議論の中から日本の政治が国民に見える形で決まるべきである。

ジャーナリズムに国民と国会との太い太いパイプ役をそのときこそ積極的に果して欲しい。

(初出/ 1991年、一部抜粋)

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