社会新報
鉱毒で漁業が不可能に フィリピンの銅精練工場
1990年5月
堂本暁子


日本政府は責任とるべき 堂本議員 調査もとにODAのありかた追求

参院予算委員会は、23日まで総括質疑、24日は公聴会を行い、25日からは一般質疑に入った。社会党・護憲共同からは堂本暁子議員(比例区)、角田義一議員(群馬選挙区)、安恒良一議員(比例区)らが質問に立った。

堂本暁子議員は22日、フィリピンレイテ島での実態調査を基にODAのあり方を追求し、国会審議に拠る情報公開を強く外務省に迫った。

堂本議員は、日本のODA(政府開発援助)によって、地熱発電計画や工業団地港湾開発計画などの周辺基盤整備が行われた日比合弁企業の銅精錬工場により、深刻な鉱毒が発生、住民の生活にも大きな影響が出始めている実態を政府に突きつけた。

問題の工場は、日比合弁で1983年以来、創業を続けている同島のバサール精銅工場。

堂本議員によると、同工場周辺の海水は硫酸排水によって一部、赤紫色に変色して魚も住めなくなり、また住民の食料となるパンの実が十分に成熟しないで落果したり、椰子の実やコメ、トウモロコシの収穫量も減っているという。

また、地域住民のために建設されたはずの発電所も、電気代が高く、住民はその恩恵を受けていない。参考人として意見を述べた岡田昌東名古屋大学助手は、88、89年に行った周辺環境調査結果から、

1、工場排水口のあるマトラン湾では89年、水素イオン濃度が通常の一万倍にも達し、漁業は不可能に

2、海底の泥には、もう一度、精錬に使える濃度の銅が含まれるなど、重金属が多量に流出している……などを報告し、「明らかに工場の影響が見られる」と述べた。

堂本議員は百年前に日本で起こった足尾銅山の鉱毒被害が今も続いていることを挙げ「銅公害が百年後に日本からアジアへ広がっている。政府は責任を取るべきだ」と迫ったが、海部首相は「害毒を出していけないのはアジアも日本も同じ」と答えるにとどまった。

堂本議員はまた「ODAの実態を知ることは難しく、マイナスの面は出てこない。地球の住民に本当に喜んでもらうためには、すべてを検証する必要がある」と、情報公開を強く求めた。