週刊社会保障
政党インタビュー
焦点は診療報酬・薬価制度見直しの具体化
1997年4月
新党さきがけ 堂本暁子


医療保険改革で主要7党の対応を聞く

医療提供体制を含む医療保険制度の抜本改革の第1歩として位置づけられる平成9年の健康保険法等改正案は、本人負担の原則2割の実施、薬剤負担の導入、政管保険料率の引き上げ等を内容としている。同法案は、衆院段階での修正をめぐって協議が進められている。

4月7日にまとまった与党の「医療制度改革の基本方向」は、21世紀のわが国の医療制度の方向性を示す羅針盤ともいえる内容である。抜本改革に向けての基盤安定が先決として負担増を必要とする自民党と、改革の成果を負担増の前提とする社民党との間には、依然として隔りがあり、さきがけも基本的には社民党寄りの姿勢を崩していない。

むしろ与党協議に加わることになった民主党が法案修正に柔軟な姿勢を示している。自民党、社民党、新党さきがけの与党3党のほか、新進党、民主党、共産党、太陽党の社会保障政策担当者に改正法案と今後の抜本改革に向けた考え方を聞いた。

条件つき早期成立を

今回の法案については、本来ならば医療制度の改革、介護保険などの福祉との組み合わせのような抜本改革が行われた後に、なお必要ならば患者負担を求めることがスジであろう。

しかし、バブルの崩壊と、本来ならば10年、20年前に着手していなければならなかった改革が後手にまわってきたという2つの理由から、負担をいただかなければ保険制度が崩壊してしまうことになりかねない状況にある。

また、皆保険制度を維持していくためにも、この法律を通していただいて、一刻も早く国民が安心して医療サービスを受けられる制度を構築するよう努力していきたい。

およそ半世紀近く今の制度を採用してきたが、高齢化の進展や、疾病構造の変化、医学の進歩、医師数・医療施設数などの状況の変化のなかで、抜本改革がどうしても必要となってきた。医療保険財源が底をついてしまうという状況の下では、今回は負担増もある。

しかし、さきがけとしては、患者に負担を求めるだけでなく、今の医療にムダはないか、もっと効率よくできないのか、そういったことを基本に抜本改革を実行しなければ、負担増には応じられないという方針で与党医療保険制度改革協議会で検討してきた。

医療費のムダとしては、薬価基準制度と出来高払制の問題点が指摘されている。第一に、薬価基準制度については、薬価差の解消が急務である。薬価差は患者への薬の過剰・重複投与の原因となっている。

そして第二が、出来高払制による医療費の増大の見直しである。これを二本柱として取り組んできた。

特に診療報酬は、アメリカにDRGというシステムがあり、わが国でもこれを参考にしていくべきである。定額払制(包括払制)にも、日額、月額、疾病別などいろいろあるが、積極的に研究していくことが大切で、出来高払いの堅持ではなく、十分に検討して定額払い制が最も効果のある医療領域には積極的に導入していくべきである。

医療提供体制を充実

ここ数年の医療費の伸びと国民所得の伸びには大きな差が出ている。グラフでは扇形に広がっており、国民所得の伸びは、医療費の伸びに追いついていない。このため医療保険制度は危磯的状況に陥っているが、政治家としてこういう状況を放置することは許されない。

本当はもっと以前からこの状況を予測できたはずであるが、さまざまな利害に阻害され、政府の対応が遅れてしまった。具体的な対応として、さきがけは以下のような提案をしている。

第一に、健康な老後を過ごすために、病気になってから高いお金を払うのではなく、日頃から健康を増進し、万一具合が悪いときは早期に病気を発見して早期に受診するというプライマリ・ケアの促進である。そのためにも大病院ではなく、近所の医者にいけるような、かかりつけ医の機能を強化することが大切である。

しかし、強調しているのは必ずしもかかりつけ医と病院を分けることではなく、例えば中小都市においては50床の小さな病院があり、老健施設もあって、そこで地域への往診もするような総合的な施設が地域医療の拠点として機能している。

患者は一人の人間であり、ここは福祉、ここからは医療ではなく、そこへ行けば総合的に対応してもらえるような施設を評価し、普及させる仕組みをつくっていかなげればならない。また、情報提供の充実も重要である。必要な情報がなければ患者は医療機関の選択もできない。医療機関のパフォーマンスの評価も大切になる。

老人保険制度については、「独立」、「突き抜け」が提案されているが、一長一短があり、もう少し検討してから結論を出したい。