東京新聞
堂本暁子参議院議員
IUCN(国際自然保護連合)副会長に
……健康な地球環境を守る輪広がれば……
1997年5月
国保良江


『悪者イメージの日本……選ばれることに意義』

IUCNの副会長に選ばれ「日本での活動も活発にしていきたい」と語る堂本暁子議員=東京・永田町の参院議員会館で地球環境問題に開心を持ち「地球環境・国際議員連盟」(グローブ)の一員として活躍する堂本暁子参院議員(さきがけ)が、「レッドデータブック」づくりで知られる「国際自然保護連合」(IUCN、本部スイス・グラン)の副会長に選ばれた。

「健康な地球環境を守る輪が広がっていけばいい」と抱負を語っている。「日本は熱帯雨林の伐採や野生動物保護の観点から、悪者に見られています。だからこそ、日本から副会長が出る意義はあると思うんです」と堂本議員は意欲を見せる。

IUCNは、欧米では広く知られた国際的な自然保護団体。第二次世界大戦後の1948年、「自然に危機的変化が起きている」と気づいた17ヵ国の生物の専門家が、フランスのフオンテンブローの森に集まって結成した。

発足49年目の今年、南米エクアドルのヨランダ・カカバツェさんが会長に、また副会長4人のうちの1人に堂本さんが、4月末の役員改選で選ばれた。女性が会長、副会長の座に就いたのは初めてだし、途上国から会長が選ばれたのも初めてで注目を集めた。

会員は国や行政機間、非政府組織(NGO)で、現在134ヵ国、856団体(1997年4月)を数える。環境庁は20年前から会員だが、日本は国としては3年前に会員になったばかり。IUCNが日本で知られるようになったのは1990年、沖縄・石垣島の新石垣空港建設問題で、貴重な白保サンゴ礁が破壊される恐れがある、と環境庁などに申し入れたことから。

「開発に反対している団体のように思われていますが、全く違うんです」と堂本議員。

IUCNの一番大きな仕事は、世界で絶滅の危機にひんしている動植物のリスト「レッドデータブック」づくりで、2〜4年に一度ずつ改訂している。日本でも環境庁がこれを参考に、日本版レッドデータブック「日本の絶滅のおそれのある野生生物」を1991年に出した。

また、IUCNは世界遺産条約、ラムサール条約、生物多様性条約、ワシントン条約など、地球規模の自然保護に関する条約の草案をつくって国連に提出し、国連機関の国連環境計画(UNEP)の母体にもなった。

堂本議員は1990年、アメリカで開かれたグローブの総会で、生態系の循環をひとつの全体としてとらえた「生物多様性」(バイオダイバーシティ)という言葉を初めて耳にし、大きな影響を受けた。

さらに1992年、「地球環境サミット」(リオデジャネイロ)で採択された「生物多様性条約」にもかかわり、地球環境問題にのめり込んだという。「『生物多様性』の大切さを知って、人生観が変わりました。これが失われることの恐ろしさに、無頓着(むとんちやく)ではいられません。

13分に1種の割で、植物や動物が絶滅しているんですから」堂本議員は1994年、推薦されてIUCNの選任理事になって以来、IUCNが支援する専門家の世界的なネットワーク「種の保存委員合」(SSC)の会議に招かれるなど、多くの国際会議に出席してきた。

IUCN副会長としては、今年12月、京都で開かれる気候変動枠組み条約の第3回締約国会議に、会長代理で出席する。これまでの活動を通して、この分野に日本の多くの専門家がかかわっていることも知ったといい、「日本でもIUCNへの関心を高めていきたい」と意欲を燃やしている。