毎日新聞
9月緑陰講演会 世界乳ガン会議に参加して
1998年1月


7月にカナダのキングストンで開かれた世界乳ガン会議に参加してきました。

今回会議に参加して、アメリカ、カナダ、ヨーロッパでは、25年も前から「環境と健康と女性」というコンセプトでずっと運動を展開していることを初めて知りました。

参加者はドクター、科学者、運動家、政治家、学者、ありとあらゆる方がいましたが、なかでも最も真剣なのは、いうまでもなく乳ガン闘病中、或いは、患ったことのある方たちでした。

今回見事だと思ったのは、アメリカ、カナダを中心とする全世界からの参加者が、環境も、政治も、女性も、健康も、ガンも、横にずっと束ねて、大きな女の運動にして、女性が世界を変えない限り、何も変わらないんだ、という考えで動いていたことです。

日本では、全国で大勢動いている人はいるのですが、環境のひとは環境のこと、自然保護のひとは自然保護のこと……と日本のたてわり行政のようにバラバラにやっているんですね。日本がいかに女性のNGO活動が遅れているか、痛感しました。

会議の日程の初日と2日目は、医学的シンポジウムで、発見法など医学的トリートメントの他、サポートグループをどのようにつくるか、手術の是非等がとりあげられました。

3日目は、あらゆる女性に対する健康のケアについてでした。単に医者のいうことをきくのがベストではなく、女性が自分の身体について自己決定していかなくてはいけないということ、治療について選択肢は多いということがいわれました。

最終日に開かれた国際ヒアリングで、私はコメントする役だったんですが、大プロが大勢みえてるなかで、私には「実は私は何も知りませんでした。だから日本に帰ったら、世界でどういう運動が展開されているか日本の女性たちに伝えます。」ということしか言えませんでしたが、皆さん、とても喜んで下さいました。

今回、このような会議('97.9.23開催「環境汚染物質と私たちのからだ……世界乳ガン会議、国際ダイオキシン会議からの報告と提言」)をします、とこの会議の主催者達にも伝えました。原因がはっきりわかっていることで、女性の8人に1人が死んでいる……とても恐ろしいことだと思います。

会議の雰囲気は、生死をさまよった経験をもつ人も多いからか、非常に強く、また一方で非常に寡黙なんです。明るい雰囲気ではありませんでした。世界全体でみて、日本はどういう位置にあるか、と申しますと、乳ガンの死亡率のトップは、アメリカ、続いてオランダ、カナダ……とあり、日本は下から3番目です。

今回も、日本語の「に」の字も知らない人から、ヒジキ、ワカメ、ミソ、トーフなんて言葉がでてくる。日本人はヒジキを食べてるから乳ガンにならないのかなんてきかれたりする。発生率の高い国では、低い日本との比較研究がすすんでいるんです。

もっとショックなのが、乳ガンの増加率で、トップは日本なんです。日本の女性のおかれている位置は一目瞭然ですね。日本でもこれから邦訳がでますが、アメリカ、カナダでベストセラーになっている「奪われし未来」という本があります。

メス同士の鳥の巣、卵は産むけど無精卵、フロリダのワニがホルモンの関係で80%がメスになっている、など著者が10年かけて集めた複合汚染の実例の山で、第2のリーチェル・カーソンともいわれています。

ただ大きく違うのは、リーチェル・カーソンの扱ったDDTは、手がない、といった目にみえるかたちで被害がでているのに対し、今は複合汚染で、生殖能力の低下という目に見えない、出るまでの歳月も長い被害ですから、なかなかおえないんですね。

ですから今、女性達が立ち上がった、女性の医師達も研究を始めて、こうして5日間にわたる会議を行なったわけですね。会議は、ベラ・アブザックが、「被害の最先端にいる私たち女性が、立ち上がらなくて誰が立ち上がるんだ、私たちが世界を変えないかぎり、この経済優先の世界は変わらない」と最後に大演説して終わりました。

もうひとつ、児童の性的搾取及び性的虐待の取締りに関する施策についてお話します。現在、森山真弓さん、小野清子さん、清水澄子さん、谷垣禎一さんとプロジェクトをつくり、児童の性的虐待を禁止する法案を次の国会に提出しようと素案をつくっています。

インターネットやまんがなど、どこまでがポルノか、画期的な議論をしています。児童への性的虐待は1つの犯罪の構成要件として、刑法で罰すべきだと打ち上げたら、谷垣さんも同じく考えていたというので、刑法の特別法として次の国会に提出、成立するだろうと思います。

取材の申し込みがきて、どうしようかっていってたんですけど、法律だけつくっても、ちっとも知らされないから困るんですよね。去年困ったのは、女性に関しての法改正が去年は非常にたくさんあったんですけど、新聞やテレビ、ラジオにでるかっていうとぜんぜんでない。

今日しましたお話についても、女性の、メディアにいらっしゃる方に是非ひろげていただきたいと思います。