【2000年8月23日号】

■9月の森の会へのお誘い

 次回の森の会は、東京湾内奥部の干潟「新浜」の 保護活動に高校生時代から取り組み、約50haの保存に成功した蓮尾純子さ んにご講演いただきます。現在蓮尾さんは、千葉県行徳野鳥観察舎に勤務され、 さまざまなプロジェクトを展開しています。次に堂本暁子が、9月3日に北九州で行われたアジア・太平洋環境女性会議に参加した報告をします。
講演 よみがえれ新浜〜千葉の干潟を守る〜
蓮尾純子氏(千葉県行徳野鳥観察舎)
報告 アジア太平洋環境女性会議に参加して
堂本暁子(IUCN副会長、参議院議員)
日時9月26日(火)18:30〜20:30
場所
環境パートナーシップオフィス
東京都渋谷区神宮前5-53-70
地下鉄銀座・千代田・半蔵門各線「表参道」下車
国連大学のとなり
会費 ネットワーク会員/学生:500円
一般:1000円
申し込みは不要、どなたでも参加できますので、ふるってご参加下さい!

 7月25日に行われた前回は45名が参加しました。関心の高い講演だと思 いまして、あえていつもより長い要旨にしました。おつきあい下さい。質問も とぎれることがありませんでした。

●「都会のカラス」 松田道生さん(野鳥研究家)

 近年、都会のカラスの研究をしている松田さんからビデオを見つつ最新の東京のカラス事情について話があった。ここ数年、都会でカラスによる被害が増え、テレビや新聞で取り上げられるなど大きな社会問題となってきている。で は、なぜ都会でカラスが増えたのか?そしてどうやってカラス問題に取り組んだらいいのだろう?

 カラスは、春にオスとメス両方が巣作りし、メスが3−5個の卵を産む。卵は約3週間で孵り雛は7週間で巣立ちする。夏以降は集団でねぐらを形成する。 都会で見られるカラスの多くはハシブトガラスである。もともとこのカラスは熱帯から温帯にかけて広く分布し、森の中に生息しているが、彼らが都会環境 に適応しているのも、本来の生息地である森の樹木の代わりにアンテナや電信柱がなっているからかもしれない。ハシボソガラスは、体も嘴の大きさもハシブトと比べやや小さめである。

 環境庁の取ったアンケートによると、カラスによる被害は主に2つに分けられ、被害の大半(約80%)が‘ゴミを散らかす’というものであり、もうひ とつは‘カラスに威嚇された、攻撃を受けた’というものであった。

 都会でカラスが増えた原因は、ゴミ問題と直結しているといってもおかしくない。夜明け前、カラス達はゴミ置き場に直行してえさを捜す。カラスの好物 は肉や油けのあるもの。食べ物を探す時ほとんど視覚に頼るカラス達にとって、東京都やその他の地域が分別回収を徹底するために“半透明”のゴミ袋を使い 出したのは好都合である。また、都会には食物のみでなく、針金ハンガーなどカラスの巣の材料となるモノも豊富にある。日本野鳥の会が行った調査によると、都内175ヶ所のゴミ置き場においてゴミの出し方が不完全なところは実に80%にも上った。

 対策としては
(1)ゴミ自体(特にカラスの好む蛋白質)を減らすこと
(2) ゴミの出し方に気を付ける(ゴミ袋満杯にゴミを入れない、ポリバケツに収まるようにふたをしっかり閉める、ネットをかける時は鎖を付けるなどして強化する)
(3)ゴミを出す時間に気を付ける(前日から出さない、収集時間に合わせて出す)、など。

 もうひとつの被害、つまりカラスが人を威嚇・攻撃するのは繁殖期のみに見られ、親鳥が巣にいる雛、または巣立ったばかりの雛を守ろうとする行動である。カラスに攻撃されないようにするには、まずカラスの行動を読むこと。繁殖期の直前に巣材を頻繁に運んでいたら、巣を見つけて卵がない場合は棒などで巣を落とす。もし卵があった場合は都道府県の窓口に相談する。また、子育てを始めたら、その付近を通る時は、傘をさす、帽子をかぶるなどして自衛すること。また、ここ数年カラスの餌付けが増えていて、これが人慣れ(人を見ても恐れないこと)を促進している。どんな場合でも、野生動物にえさを与えるのは良くないので控えること。

 今回、山の手線の駒込、巣鴨、千石周辺の約180haの地域にあるカラスの巣の数を、星維子さんの協力を得て数えたところ、六義園を除き合計30個もみ つかった。その30のうち、1つを除いて巣はすべて樹木に作られていた。また、人の集まる学校や図書館などで12個、公園や神社で7個巣がみつかった。 これらの場所は、巣より高い見張り場がある、巣作りの場所となる木々がある、夜暗く静かである、などのカラスの好む条件を備えていた。この地域で、雛まで育った割合は約60%であった。

 カラスの巣の見つけやすい時期は3月から4月上旬にかけて巣材を運ぶ時期、そして4月から6月の卵を暖める時期である。その時期、オスが巣の近く、見晴らしの良い場所(ビルのてっぺんや、電線)で巣を見張っていることが多い。この見張りガラスをみつければ、必ずといっていいほど近くの街路樹などに巣がみつかる。

 都会のカラスも人と同じく高密度で生活している。かつてカラスの縄張りは戦後間もない頃の長野県下の報告では、800mと報告されたが、都会のカラスの縄張りは100−200mである。これは、マンションなどの建物が縄張りを区切る役目を果たしているようだ。また、100m四方の縄張り内に、ゴ ミの収集場所が20から30、多いところでは50近くあるので一向に食物には困らない。また、冬を乗り切るため食料を貯蔵することもあるが、都会では ビルの屋上など食料を貯蓄する場所に事欠かない。

 しかし面白いことに、緑地である六義園では雛まで育った割合は住宅地と比べて低く、約36%であった。六義園で繁殖が順調にすすんだカラスは、園内の隅に巣を作っていたもの。他のカラスが巣を襲うことが考えられ、森の中では敵の接近を見つけずらいものと思われる。つまり、住宅地での見晴らしのよさ と豊富な食料資源が、カラスの縄張りを小さくし、それらが繁殖率を上げているのである。

 問題は、都会のカラスの研究の立ち遅れ、資料不足。都会のカラスの生息数、習性、なにを食べているのか、ゴミだけが原因で増えたのか、など基本的なことがわからないままになっている。今回の調査は、初めて都会でカラスの生態を調べたものだが、本来なら定期的に続けてカラスの繁殖率を比較するべきで ある。しかし、なかなか行政の方からそのような研究費用がでないのが現実である。カラスが都会で増えたのは、人間が作り出した問題であり、人間側がゴミの出し方などを変えない限り問題は解決しないだろう。かといって、ゴミが全くない社会も人間にとって居心地がいいとは言い切れない。ネズミやゴキブ リ同様、カラスとはこれからも長い付き合いと考えた方がよい。


○女性 巣に卵がある時、勝手にカラスの巣を壊してはいけないのはなぜ?
●松田 「鳥獣保護及ビ狩猟ニ関スル法律」で、カラスを含むすべての鳥を殺 すことは禁じられているから。巣に卵か雛がいるときは、都道府県の自然保護 担当課(東京都の場合は林務課)に許可を取る必要がある。しかし、この法律は 昭和38年に制定されたもので、そのころは増えすぎた動物をどうするかいった ワイルドライフ・マネージメントの理念はまだなかった。あの頃から環境は激 変しているので、今や時代遅れの法律である。しかし、「カラスを獲っていい」 と許可したとき、何羽くらいとっていいのか誰にもまだわからないし、また、 「カラスが獲っていいなら他の鳥もいいじゃないか」という意識が広まる可能 性に対しての懸念があるので改正と運用には慎重にならざるをえない。
○女性 カラスをむやみに駆除しても周りの地域から入ってくるから問題解決にはならない。そういった啓蒙活動や、都会のカラスの繁殖情報などの研究に 対する行政の取り組みはどのくらいされているのか?
●松田 行政の取り組みは今のところ微々たるもの。東京都だけでなく、周辺の地域も含めて対処していくべき。行政は苦情が出ると、住民感情を和らげる ために形だけの駆除を行っている。本当の問題解決は、原因のゴミ問題を解決 することが必須。
○男性 カラスの料理屋さんを始めたいのだが。
●松田 カラスの肉は食べられるが、臭いらしい。韓国の文化放送の人は「ソウルにはカラスはいない」といっていた。よく聞くと韓国ではカラスは漢方薬 (精力剤)となるため獲られてしまったそうだ。日本では、ハンターが獲った カラスを仕入れれば、法的には可能かもしれない。しかしわなだと一日あたり 約3羽しかかからないという報告もあり、安定供給は難しいのではないか。
○男性 カラスの寿命は8−9年。そのうち何回繁殖可能か?
●松田 始めの2、3年は繁殖できない。つまり繁殖可能なのは残りの5年か6年。だいたい1回の繁殖で3羽の雛が育つので1つがいあたり15−18羽 の子ガラスが育つことになる。
○堂本 カラスはどのくらいの距離を飛べるのか。カラスに個性はあるのか?
●松田 発信機を付けての調査では、1日に上野から銀座、赤坂、新宿などを まわってまた上野にもどっている。タグをつけての調査では、目黒に放したも のが神奈川県藤沢まで移動したという記録がある。東京で追い払ったら、高崎 や水戸ぐらいは、移動できるだろう。一羽一羽にも個性があるが、ハシブトは怒りっぽい、ハシボソは狡猾なやつ、 という感じ。
○堂本 被害に遭ったことは?
●松田 私はありません。「ペットが殺された」という報告はある。また、ベランダでひなたぼっこをしている時や公園に散歩に行く時、母親が離れるとカ ラスが乳母車の赤ちゃんを襲う可能性があるので注意が必要。
○女性 カラスの集団構成は?
●松田 多くの場合、2羽でいることが多い。集団で集まるネグラに入ってくるのは2羽単位。カラスは、おしどり夫婦。
○堂本 一番根本的な問題というのは何?
●松田人間が森を都市に変えたこと。カラスは人間の生活を反映している。今の親ガラス達はバブルの時代にゴミに味をしめたカラス達で、その数は増え すぎているし人間との距離も近くなりすぎた。やはり野生動物とはある程度の距離を保って行く必要があるのではないか。

●「国連女性2000年ニューヨーク会議」報告 堂本暁子

 国連女性会議がニューヨークで開かれ、私は日本政府の顧問団として出席した。北京会議から5年たち、より世界的に女性問題がクローズアップされるよ うになってきた。一方、冷戦後の世界各地で無秩序な地域がたくさん生じてしまい、ウガンダやコソヴォ、東チモールなど現在紛争が続いているところは3 7ヶ所もある。そこで犠牲になるのは一般市民、特に女性、子ども、高齢者など社会的弱者である。

 急速なグローバライゼーションによって国々の、そして個々人の経済格差が顕著になる中、「貧困の女性化」が進んでしまっている。いまだに安全な飲み水や食べ物が確保できない女性が多いのに、国連はなかなか女性と自然という両方の視点で施策を考えることができていない。たとえば、水資源から感染症 などが女性や子どもに多く蔓延するのであり、安全な水の確保は途上国では死活問題であるのにも関わらず、バイオテクノロジーなど科学技術を駆使した農 業を推進する国の反対により、「水質の調査」や「有機農業」における女性の役割を強調する文言は、会議の成果文書から削除され、しかも日本やヨーロッ パはそれを復活するように発言をしなかった。

 IUCN(世界自然保護連合)が国連のオブザーバーとしての地位を手に入れたのを受けて、今回私はニューヨークの会議で、IUCNを代表するという立場で発言する機会に恵まれた。その声明内容については、お配りした「21世紀のジェンダー平等と開発、平和:世界自然保護連合(IUCN)の声明」 という資料の通り。私のホームページでも公開している。身近なことで言うとゴミの出し方なども含めて、1人1人がどうやって自然保全にあたっていくかが大切だということ。  

  身近な人との暴力が、相手を尊重し、愛し、大切にするという神経を麻痺させ、人と人、人と自然の共生を阻む。暴力のある家庭で育った人は暴力に対して感覚が麻痺してしまう。これが代々積み重なって暴力がはびこる原因となる。学校でのいじめ、外国人に対する排除、それらがさらにエスカレートして武力 紛争などにつながっていくことも考えられる。日本人同士、日本と外国、人と自然の関係を考えてゆく時に、そういう視点で見ていかないといけない。
○男性 今回のサミットではあまり環境問題が大きく取り上げられなかったようだが、本当のところはどうなのか?
●堂本 京都議定書が早く採択されるように小渕さんに頼んでいたのだが残念。京都で開かれたCOP3以後話が専門的になりすぎた。CO2の排出量をどのく らいに設定するかではなく、生態系を保全するという観点で取り組んで欲しい。政治指導者たちがしっかりとリーダーシップを取らないといけないが、クリン トン大統領もシラク大統領もあまり前向きでない。
○女性 日本で女性に対する暴力が増えてきている。どうしてこうなったのか?
●堂本今の社会、つまり機械のリズムで働かされる競争社会のストレスもあるだろうし、覚醒剤やアルコールも暴力を増やす。