堂本暁子の永田町レポート
市民が守る雁のねぐら蕪栗沼
1998年6月22日

皆さま 堂本暁子です。

秋になると、シベリアから30,000羽もの雁や白鳥が宮城県田尻町の蕪栗沼(かぶくりぬま)にやってきます。都会ではすっかり失われてしまった湿地の豊かな自然環境が残されているからです。

その蕪栗沼を遊水池にするための全面浚渫計画が出されていましたが、地域住民、地元自治体、学術研究者、自然保護団体などの反対により中止されることになりました。その後、蕪栗沼の湿地環境を守り、なおかつ遊水池としての機能が可能となる湿地のあり方が、地元の人たちを中心に宮城県をも巻き込んで検討されています。

私は、5月30日に行われた「第3回蕪栗沼探検隊」に参加し、長靴を履いて田んぼの中を半日、歩きました。畔から田んぼを見ているのとは違い、懐かしいミズスマシやヤゴなどの生き物や様々な植物や鳥との出会いもありました。新聞に出ている写真は、ヨシの間に巣を作るオオヨシキリに足輪をつけるため、初めて鳥を手にとった時のものです。私にとっては何とも感動的な田んぼの中での一日でした。しかし、何よりつらかったのは、散弾銃の鉛玉を飲み込み中毒を起こしている雁が日本からシベリアに飛び立つことができないことです。地元の人たちの間からは、減反をしても田んぼに水を入れるなど、管理をしている農家には厚く補助すべきではないか、との意見も出されました。環境の視点から農業のあり方を考えさせられた一日でもありました。

参議院国土・環境委員会「もう待てません!一刻も早い決断を」
蕪栗沼で体験したことを早速に6月4日の参議院国土・環境委員会で質問しました。

◎鉛散弾銃について
堂本:
北海道の宮島沼で1989年には30羽以上、そして今年は10羽以上の白鳥が散弾銃の鉛玉中毒で死亡しました。2年前に、当時の岩垂環境庁長官は、「鉛玉禁止に向けて関係機関や団体と協議を始める」といった。私はもう何年も前にお願いし、環境庁がやるといってからもう5、6年経つ。鉛玉の禁止は一体どうなっているのですか。
丸山晴男環境庁自然保護局長:
安全性の問題と買い換えの問題がありますので、現在、何とか対処していきたいということで、関係団体とも鋭意調整を進めているところです。いましばらくお待ち頂ければと思、います。
堂本:
もう待てない。白鳥やガンはもちろん、いろいろな鳥がどんどん死んでいる。大木大臣から、必ずやるとはっきりご答弁頂きたい。
大木浩環境庁長官:
岩垂長官が長官の立場でそういうご判断があったのであれば、私もそれを十分に尊重して、それを受け継いで、できるだけ早く回答を出したいと思っています。
堂本:
犠牲が出てからでは遅すぎるのです。環境庁がやらないのであれば、私たちは議員立法を一刻も早く出さなければならないと思っています。

◎休耕用の減反補償金に傾斜方式を
堂本:
農業基本法の改正に向けて調査会の中間とりまとめが出ていますが、環境との調和を大事にするとしながらも、低農薬とか化学肥料を減らすための農業改善といった比較的対症的な方法しか書かれていません。農地環境の自然度を高めるための具体的な政策を展開する必要があるのではないか。そういった視点から、農地の自然環境を改善する作業を農業の一部として位置づけることができないか。また、生物の生息環境をより好ましいものとするために、稲を作らなくとも水田を湿地として管理する農家には、「休耕田の減反補償金傾斜方式」を取り入れることはできないか。
石原葵農水省審議官:
新しい農業基本法を作る上で、重要な点をご指摘いただいたと思っております。まず第一に、農業が環境保全の大きな機能を果たしているというのは間違いなく、他方、農業をやめることによって環境に対してマイナス、環境負荷を与えているという点も含めて農業政策を進めなければならないと考えております。
堂本:
収穫が終わった水田に水を張り、渡り鳥が羽を休めることができるような生息地のネットワークの地図作りを環境庁と共同で作業していただきたい。また、そのために田んぼを休耕地にした場合に補助をすることも検討して頂きたい。
石原葵農水省審議官:
特に環境に配慮した農業政策を推進するということで、十分ご指摘の点も踏まえ検討を進めたいと思います。

クラスノヤルスクから飛んでくるのは龍太郎総理
6月9日、私はロシア大使館に夕食会に招かれましたが、そこの席上、シベリアから飛んでくる雁のため、地元の人たちが蕪栗沼を守る運動を展開していることを話しました。「鳥には国境がありません。シベリアから日本に来て、朝鮮半島まで飛んでいくそうです」と私。「クラスノヤルスクから何が飛んでくるかわかりますか」と大使。「どんな鳥かしら」と真剣に悩んでいたら、大使は「橋本龍太郎総理です」と、いかにも茶目っ気たっぷりの表情。雁がとりもつ日ロの友好親善です。