皆さま 堂本暁子です。
組織犯罪対策3法をめぐって、徹夜の混乱 8月10-12日
終盤国会は荒れに荒れました。11日午後5時に始まった参議院本会議は、12日午前6時半まで徹夜で続き、1時間の休憩をとった後、7時半から再開し、午後9時半に散会しました。ここまでもめた最大の理由は、組織犯罪対策3法を審議していた法務委員会での強行採決です。民主党の質問中に、自民党が採決の緊急動議を出したと言われていますが、速記録を見る限り、委員長は法律の名称さえも読み上げてもいないので、正式な採決は行われていないとしかいいようがないのです。にもかかわらず、委員長は「可決した」と参議院議長に報告し、本会議での採決ということになったわけです。これに反対する民主・共産・社民の野党3党は、委員長の解任決議、首相の問責決議と抗議を繰り返し、牛歩戦術などで抵抗したのですが、自自公の数の前には為すすべがありませんでした。
今回、私をはじめ参議院の会としてとった行動は次の通りです。
1.参議院の会は、法務委員会に席を持っていないので、強行採決の事実関係について、正確な判断ができない。よって一連の解任決議については、棄権に回る。
2.各法案については参議院の会は党議拘束をしないので、各自が自由に判断。
私の場合は、組織犯罪対策3法については反対。住民基本台帳法改正については自社さの与党時代に作った法律であり、整合性を考えて賛成。少し前になりますが、国旗国歌法については、国歌は法制化する必要がないというのが私の主張。従って、民主党の修正案に賛成し、政府の原案については棄権しました。国旗部分について半分だけ賛成だからです。
この3日間の混乱を乗り切って、私が感じたことは、議員同士が1つの政策について議論するという民主主義の基本が、日本の国会では実現していないということです。法務委員会での出来事がそれを如実に示したと思います。法律を通すか通さないかに至るまで、いわゆる国対政治という水面下の交渉で決めてしまうことに、一番の問題があると思っています。当たり前のことですが、国民にもわかるように、マスコミの前で堂々と議論をし、政策を決めていくべきです。民主主義の形を取りながら実質的には民主主義が成熟していない。残念ですがこれが我が国の現状です。官僚が主導する時代から、政治が機能する時代へと変えるためには、自分の政策を掲げて議論できる人たちが議員になって、堂々と議論しなくてはならないのです。
女性政策の目玉から、オオワシの気持ちまで〜今国会を振り返って〜
1月19日に始まった第145国会は、57日間の会期延長を行って今日まで207日間行われました。内閣が提出した法案135本のうち、120本が成立し、衆議院での議員立法は38本中13本が成立、参議院での議員立法は22本中5本が成立しました。議員立法全体では60本中、成立は18本ということになります。その中で私が深く審議に関わった法案としては、国民福祉委員会での精神保健福祉法改正、農業者年金法改正と、総務委員会での情報公開法、男女共同参画基本法、国土環境委員会での鳥獣保護法改正、さらに発議者として衆議院で答弁に立った、児童買春児童ポルノ禁止法などです。また今国会では2度も本会議で代表質問を行う機会があり、充実した国会活動が行えたと思っています。
この夏休みは…
まずは長野県の小諸に95歳の母を連れて避暑に行きます。小諸へは、IUCN(国際自然保護連合)についての本をまとめるために、スタッフもいっしょに行きます。8月下旬はまずドイツのボンで開かれるGLOBE(地球環境国際議員連盟)の世界総会に出席、そのまま、IUCNが来年開く国際会議の打ち合わせのために中東ヨルダンに回るという忙しいスケジュールです。
地方分権、変えようと思えば…
国会日程の合間を縫って、いろんな勉強会に出席していますが、最近でおもしろかったのは、8月2日に行われた参議院地方分権推進研究会での三重県知事、北川正恭さんの話。「部長や課長だけではなく、全ての県庁職員から意見を聞き、改善計画を作らせたことで、県が変わった。市町村、国までも変える起爆剤になる」やる気になれば地方自治も大きく変わるということを実感しました。
25mの高さから、森を見下ろすと…
先週末は、北海道大学の苫小牧演習林の視察に行ってきました。今、森林の研究で注目されているのは、森のてっぺん、「林冠」なのだそうです。燦々と陽光を浴びる樹木のてっぺんで、虫など生物の活動が一番活発だからです。私もクレーンに乗って、25mの高さまで上がり、はじめてオオタカの気分を味わいました。
若い女性にも魅力ある農村の再生に向けて
農業者年金基金法の一部改正案に対する附帯決議に、「農業就業人口の過半を女性が占めるに至っている現状」との文言を追加しました!
8月5日参議院国民福祉委員会
ご存じですか? 厚生年金に加入できない農業者の年金制度として、農業者年金基金がありますが、現在、加入者数30万人のうち、女性はなんと1.6万人しか加入していません。農業就業人口の6割を女性が占めているにもかかわらずです。
国民年金同様に、農業者年金の保険料を据え置くという改正案が提出され、8月5日国民福祉委員会で審議を行いました。農業者年金基金は30万人の加入者に対して、年金を受給している人の数が75万人もいるという財政問題を抱えており、抜本的改革が必要とされています。
質疑要旨
堂本暁子
1995年北京で開かれた世界女性会議で、日本の女性農業者が「女性の地位向上を行ってきたがどうしても太刀打ちできなかったのが年金問題」と発言。年金制度がどれだけ根深い問題かを示しています。
農業者年金に、遺族年金の制度がないのもおかしいし、福祉である年金制度を農業の構造改善の推進という政策目的に用いることにも疑問を感じます。千葉県の鴨川のある集落では、40代、50代、60代の独身男性がいるそうです。どうしてこのように女性にとって魅力のない農村になったのでしょう?そもそも女性が30a以上の農地を保有しないと、年金をはじめ様々な権利が発生しないことが問題だと考えますが、農水省では、30アール以上の農地を所有する女性農業者のデータを把握していないとのこと。本気で考えているとは思えません。農業者年金基金は、女性加入者を増やそうとシンポジウムや戸別訪問までしているそうですが、抜本的改革こそ必要だと考えます。
また、新規に農業を行おうとする場合、自分の仕事を全て辞めないと農地を購入することさえできないのが事実です。新規参入者へのインセンティブをもっと検討するべきではないでしょうか? 今後の食糧安全保障を考える上で兼業農家の役割も重要だと考えます。農水省の考えを聞かせて下さい。
中川農水大臣
女性の農村における役割は現に非常に重要であります。農村女性の悩みなり課題について、女性農業者や地域の女性の方々、行政においては女性職員の意見を聞きながら、取り組んでいきたいと考えております。
渡辺構造改善局長
兼業の問題については、他の被用者年金との関係上、年金制度全体を検討する必要がでてきます。新規参入の問題については、農業の構造や就業構造が変わってきているので、農業者年金制度の研究会の中で、どのようにすれば安定した年金設計ができるか勉強していきたいと考えます。
ご覧の通り、答弁は納得のいくものではありませんでしたが、質疑の後、全会一致で採択した附帯決議に、私は、女性の視点をどうしても込めたいと考え、各会派の理事を説得して回り、「農業就業人口の過半を女性が占めるに至っている現状」という文言を加えることに成功しました。附帯決議とは、法律のような拘束力はありませんが、国会の議事録に残る決議として、法文に準ずる効力を持ちます。今後、農業者年金制度の抜本的改革を論議するにあたって、国会、地方議会などあらゆる場において、この参議院の附帯決議が尊重されていくことを強く願っています。
農業者年金法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
平成11年8月5日 参議院国民福祉委員会
農業者年金制度については、農業従事者の高齢化及び減少、農業就業人口の過半を女性が占めるに至っている現状などの農業を取り巻く情勢の変化、年金財政の悪化などにより、抜本的な改革が必要とされる状況にあること、また、社会保障制度審議会から、農業政策上の有効性、年金制度としての社会的妥当性、財政的健全性などについて、再三にわたる根本的な検討が要請されていることにかんがみ、政府は、農業者年金制度の在り方について検討を進め、早急に抜本的な改革を行うべきである。