堂本あき子なの花日記 No.138
地球温暖化で北上する、シュロ
2010年5月6日

皆さま 堂本暁子です。

5月22日の「国際生物多様性の日」に、BS-TBS(BS6チャンネル)で、17:00〜18:00に放送する番組を作っています。連休中、もっぱらTBSのある赤坂通いでしたが、20年ぶりに通う赤坂は、すっかり変わってしまっていました。

5月3日は、小石川植物園で、植物学者の岩槻邦男先生にインタビューをさせていただきました。植物園は、藤とツツジが満開で、都心とは思えない美しさでした。

その植物園の一角に、手入れをしないで、植物の自然な変化を観察するところがあるのですが、そこに、1960年頃から、本来は九州南部に自生するシュロ(棕櫚)が生えるようになりました。今では、宮崎や鹿児島で見るようなシュロの大木が、いたるところに茂っています。

岩槻先生は次のように説明してくださいました。

「長い歳月をかけた進化の結果、安定した生態系から地球温暖化の影響で、一部のものだけが飛び出して、何百キロか北に移動したり、途中までしか来られなかったり、動かなかったりすることによって、その地域の生態系のバランスが崩れ始めます。シュロはそうした実例のひとつです。移動の速度の差や一部の移動によって生態系に変化が起こりますが、それがだんだん大きくなると、生態系全体が崩壊してしまうのです。そのことが、恐ろしいことなのです」と。

植物にも、足の速い植物とそうでない植物、あるいは、長い歳月をかけないと北上しない植物といろいろあって、温暖化のような人為的な環境変化は、入ってくる生態系の側も、抜ける地域の生態系も、いずれの側でも生きものの織り成す生態系の破壊がジワジワと進んでいるのだと知り、私たちが思っているより深刻な事態が進行しているのだと感じました。

2010年「国際生物多様性の日」及び「グリーンウェイブ」について
環境省生物多様性センター
環境省生物多様性センターの、生物多様性ホーム