堂本暁子の永田町レポート
NPO法案、委員会で可決
1998年03月03日

皆さま 堂本暁子です。

今朝、開かれた参議院の労働・社会政策委員会で、市民活動促進法案(特定非営利活動促進法案)の採決が行われ、全会一致で可決されました。私の場合には、1994年から法案づくりにとりかかり、足掛け4年の力仕事でした。

衆議院では、新進党並びに共産党が与党のNPO法案に反対し、全会一致ではありませんでしたが、参議院ではねばり強く与野党で交渉を重ね、修正案を完成させた結果、全会一致にこぎつけました。あとは参議院本会議での採決、衆議院に送り返しての採決で経てこの法案は成立する見込みです。

委員会が終わったとたんに、傍聴席をうめた市民団体の人々と「よかった。よかった」と手を取りあって喜びました。日夜、最後の段階では共に修正をめぐってはらはらしたり、悩んだりした仲なので、お互いにこの瞬間は感無量でした。以下は、私が新党さきがけを代表して行った原案と修正案に対する賛成討論です。

自民、社民、新党さきがけの与党3党によるNPOプロジェクトチームが1995年2月15日に発足してから、ちょうど3年になります。

その間、「市民活動促進法案」をめぐって、全国で市民による集会が開かれ、与野党のNPO担当議員が法律の内容について市民と意見を交換してきました。その意味で、今回提出されている法案は、市民と議員によって議論を深め、共に作り上げてきたものだと言えましょう。参議院の当委員会では、委員会はもとより、理事懇談会の場でも、与野党の枠を超えて忌憚のない議論を闘わせ、修正案を完成することができました。こうした経緯からいって、この法案は名実ともに「議員立法」として誇れるものと確信しております。

この法律の基本理念は、時代の要求に沿ったものです。戦後の経済復興、所得倍増、高度経済成長と、わが国は、外国から「エコノミックアニマル」と呼ばれるほど、1億総働きバチになって、現在の豊かさを実現しました。しかし、ポスト工業社会に入る21世紀は、市民の価値観の座標軸が生産から生活へ、効率から公正へ、競争から共に生きる、共生へ、と大きく転換する中で、市民によるNGO・NPOが変革の担い手として登場してきたと言えます。

先日、来日したイギリスのブレア首相は「変革の時代に向けての政治」を強調しましたが、イギリスのチャリテイ・コミッテイ、いわゆるNPO委員会がこの時代に大きな役割を果たしているのはもちろんです。私たち、新党さきがけが、『市民活動法人法ーNGO・NPOの推進を目指してー』を編み、広く訴えたのは、3年前ですが、今も信念は変わっていません。冒頭に、私は以下のように書きました。「世界は変革期にある。環境の破壊や貧困・飢餓・難民の増加など地球規模で進む危機に、意識の程度に差こそあれ、世界の市民は不安を抱き始めている。市民がそのことを自覚したとき、市民団体やNGOの活動は同時多発的に世界各地で起こり、盛んになってきた。それも身近で起きている水の汚染や、生態系の破壊、HIV感染、麻薬の蔓延、暴力的な人権侵害など、さまざまな出来事は、政府や企業、そして国際機関だけで解決することは難しい。市民はこうした問題を自らの手で告発し、解決するために行動を起こした。国際的なNGOのネットワークも進んでいる。それは国境を越えた市民セクターのうねりである。」

しかし、残念ながら、わが国はイギリスに遅れること300年、市民セクターが活躍できるような社会的な環境及び法体系が整備されてきませんでした。しかし、今回、この法律がやっと誕生することで、市民活動が促進すると確信し、原案並びに修正案に賛成致します。

この法案を立法するきっかけとなった阪神・淡路大震災の時は、「ボランテイア革命」といわれたほどボランテイアが活躍しました。しかし、市民によるNGO・NPOは決してボランテイア、つまり奉仕活動に限定されたものではありません。非営利の事業体の経済活動にも現代的な価値があります。アメリカではすでに民間非営利団体の事業規模が、1991年にはGNPの6.7%を占め、その経済活動がオイルショックのために景気が低迷していたアメリカ経済の力になったと言われています。わが国でも雇用の創出、労働力の再配置はもちろんのこと、景気を活性化するまでの新しい経済セクターとして、市民のNGO・NPO活動に期待するところです。

しかし、この「市民活動促進法案」に満足しているかと言えば、決してそうではなく、多くの課題を残していると考えます。

その第1は法人格の付与についてです。
法人格の取得は本来、準則主義であるべきです。営利法人のように、非営利の民間団体が登記によって法人格を得られるよう、将来は、民法34条を改正すべきだと考えます。

第2に、徹底した情報公開によって悪用を防止することです。
今回、準則主義を実現できなかったのは残念なことですが、法人制度の悪用や脱税の実態があったからです。3年後の見直しまでに、この制度の悪用や脱税などが行われないことを、市民団体自らが示すべきでありましょう。そうすることによって初めて、準則主義を実現することができると思います。

第3に税制の優遇措置に関してですが、NGO・NPOが情報公開によって実効をあげた場合には、市民活動にとって必要不可欠である税制上の優遇措置をスタートすべきです。日本の公益法人および特定公益増進法人は、税制上の優遇措置を受けていながら経理内容が公開されていません。全く不透明です。市民セクターの社会的基盤を確立するためには、現行の税制の優遇措置に関するシステムを改正し、民間非営利団体全体に対する透明な税制の優遇措置を構築すべきであると考えます。

私自身、NGO・NPO活動に関わって参りました。その身でこの法案の立法に参画できたことを大変うれしく思っております。これから3年後の見直しまで、市民とともに、理想とする法案づくりに関わっていきたい、目指していきたい、と思っています。