堂本暁子の永田町レポート
経済、ODA、外交政策、環境について
1999年6月25日

皆さま 堂本暁子です。

梅雨空の下、アジサイの花が日ごとに紫色を深める日々ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
以下は、ケルン・サミット報告に対する私の質問と総理の答弁要旨です。

1.経済対策について
堂本:
民間設備投資は落ち込み、失業率も戦後最悪、経済回復にはほど遠い状況です。政府の発表した産業競争力強化対策は、企業の事業再構築や技術開発の環境整備、ベンチャー企業育成などが中心で、これだけではサミットで合意した構造改革は進みません。サミットでの合意が冷めないうちに、経済再生に向けた官民一体の取り組みを迅速に進めるべきではないでしょうか?

小渕総理:
ご指摘の通り、経済の供給面の体質強化のためには官民が一体となって取り組んでいく必要性があります。官民が意見交換する場としての「産業競争力会議」での議論をふまえて先般とりまとめました「産業競争力強化対策」は、産学官による「国家産業技術戦略」の策定、高齢化対応、環境対応、情報化対応の分野における官民の共同プロジェクトの推進といった施策を取り入れております。今後、今述べた対策の速やかな実施等を通じまして、抜本的な構造改革を推進して参ります。

2.直接・間接に負担を負う私たち市民の立場から、債務帳消しとODAについて
堂本:
日本はサミットの場で重債務貧困国の債務帳消しに応じましたが、債務を帳消しにするということは、有償資金援助に失敗し、4千億円もの不良債権を抱え込んだということです。東南アジアで唯一債務帳消し対象とされているラオスでは、20年前に焦げ付いた借金の返済が済んでいないうちに、96年に新たなダム建設に融資を決め、今回それをまた帳消しにせざるを得ないという事実には、誰しも納得できないでしょう。ラオス政府が実際に帳消しを求めるかどうかわかりませんが、中立的な立場から、実態の厳正な評価を行うべきはないでしょうか?
そして、この債務問題を絶好のチャンスとして、ODAを質的に転換することの必要性を総理に質しました。例えば、情報公開、相手国の管理運営への関与、地域住民や地元のNGOとの合意形成、包括的な国別戦略の作成などを、これまで以上に進めていくべきでしょう。又、福祉や教育など、短期的には利潤をあげることができない社会開発分野に対して有償資金援助が適切なのか、再考するべきではないでしょうか?

小渕総理:
今後、ODAの課題や国別の援助計画を明確にし、事業の選択から実施、事後評価に至るまでの透明性を一層高め、さらなる情報公開を進めて参りたいと考えております。また、結果としてこのような債務問題が発生したという事実を真摯に受けとめ、今後はより慎重な対応が必要だと考えております。

3.外交政策について
堂本:
先進主要国首脳会議(G8)が、世界の紛争予防に重要な役割を果たすべきという総理の発言に、G8の役割を重要視することで、国連の存在を弱めはしないかと懸念します。また、G8の共同宣言に北朝鮮ミサイル実験への憂慮が盛り込まれたことを評価しますが、多国間レベルの交渉にとどまらず、日本が独自に「近くて遠い国」北朝鮮と多面的、多角的な交渉を展開するべきではないでしょうか?

小渕総理:
コソボ問題においてはG8は国連を補完する役割を果たしましたが、このようなG8の役割を重視することは、国連重視という我が国の外交政策の柱を変更するものではないと考えます。我が国が米韓と緊密に連携して対処すべきことは言うまでもないことと考えますが、抑止と対話のバランスを取りつつ、北朝鮮がミサイル問題等の国際的懸念や、拉致問題をはじめとする日朝間の懸案に建設的に対応を示すのであれば、対話を通じまして関係改善を図る用意がある旨、常に呼びかけ、もって北朝鮮との信頼醸成に努めていきたいと考えております。

4.世界自然保護連合副会長としての活動から痛烈に感じてきた課題について
堂本:
縦割りな国連行政、特に環境関連の国際条約の事務局をもっと有機的に統合していく必要性があります。今求められるのは、92年地球サミットの時のレーガン大統領やミッテラン大統領のような、強い政治的リーダーシップ。来年沖縄で開かれるサミットでは、主催国日本のイニシアテイブで、地球環境問題を解決するための統合的メカニズムの構築を実現するべきではないでしょうか?

小渕総理:
沖縄サミットでの我が国のイニシアティブについてご提案がございました。我が国は地球環境問題を、国際貢献を果たしていく最重要分野の一つとして位置づけております。国際的には、一層効率的・効果的に地球環境問題に対処すべく、ご指摘のありました統合されたメカニズムによる関係機関の連携強化に関するご提案もふまえつつ、引き続き本分野で積極的に取り組んで参る考えであります。