皆さま 堂本暁子です。
縦割りから包括的な環境政策の転換を目指して〜国連大学で初の「連携と調整に関する国際会議」〜
7月14日から16日まで、私は国会ではなく、渋谷の国連大学に通いました。「インターリンケージ〜多国間環境条約における相乗効果と調整に関する国際会議〜」に参加するためです。
日本でも縦割り行政や企業の中の縦割り構造などの弊害が問題になっていますが、国際社会でも同じような問題が指摘され始めています。私の場合には、「温暖化に追われる生き物たち」という本をまとめた時に、地球温暖化が生物多様性に与える影響は明らかであるにもかかわらず、気候変動枠組条約と生物多様性条約のどちらの条文にもこの分野について書かれていないため、誰も取り組んでいないことに気がつきました。以来、この数年間、環境に関する条約間の連携と調整が必要だと主張してきました。そこに目を付けられて、14日の全体会議で基調講演をする羽目になりました。概要をお知らせいたします。
20世紀は、「縦割り構造」の時代でした。しかし、21世紀を前にして、この「縦割り構造」が通用しなくなっています。環境に関する国際条約の数は、92年の時点で900以上に上るとの調査もあり、こうした膨大な数の条約の間には重複もあれば、その網の目に落ちこぼれている課題も数限りなくあるのです。しかも、それが国内法にも投影され、末端の自治体にまで及んでいます。
このことに危機感を抱いた人たちが、国連や世銀、各国政府やNGOなど世界の各地で、同時多発的に、包括的なアプローチの必要性を指摘し、その構想を展開してきました。それは「時代の要求」と見るべきでありましょう。
21世紀にどのような包括的なシステムが必要とされているのか、あるいは理想的な枠組みはどのようなものなのか、といった共通の認識やビジョンがまだ確立されていません。この会議における私たちの課題は、何らかの形で、共通の方向性やビジョンを確認することによって、地球規模問題、特に環境問題への取り組みの質的な転換を図ることであります。それは、環境の保全や平和の創造など、将来世代のために、よりよい世界を構造する努力に他なりません。
15日からは5つの分科会に分かれ、私は「科学的メカニズム」の分科会を世界銀行のロバート・ワトソン氏と共同議長として担当。環境関係の条約だけではなく、人口や貧困といった開発分野との連携の重要性にまで及び、ダイナミックな展開でした。私にとっては新しいテーマなので世界の各地から集まった条約事務局長やスタッフ、科学者、そしてNGOの人たちと意見を交換し、学ぶことの多い3日間でした。