堂本暁子の永田町レポート
ベビーホテルキャンペーンから20年
2000年2月22日

皆さま 堂本暁子です。

国会が「正常化」し、今日は国民福祉委員会で厚生大臣の所信表明に対する一般質問に立ちました。
私は1980年代の初頭、TBSのニュース番組で、ベビーホテルの特集を組みました。ベビーホテルとは、劣悪な無認可保育所のことを私たちが名付けたものです。毎週1回の放送を続けているうちに新聞や行政、国会でもベビーホテルという名前が使われるようになりました。私個人としては国会議員になったきっかけでもあります。
それから20年、ある保育園の園長さんから、当時私たちが取材したのと同じようなベビーホテルの広告が送られてきました。
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保育園の経営者求む!
開園より半年後の平均収入は76万4千円。
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園児募集
対象年齢は6ヶ月から6歳児。
料金月極 預かり2万7500円。
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この広告を見て、私は飛び上がるほど驚きました。厚生省は20年前にベビーホテルは認可保育所に統合していくと断言したにもかかわらず、同じような事態が蔓延しているのです。

●堂本:
1981年ころ、「ベビーホテル」と総称された子どもの預かり業が蔓延し、心身の発達に支障をきたすだけではなく、乳児の死亡事故が多発しました。当時の園田厚生大臣は、その事故に対して謝られたのを覚えています。今、お手元に配ってあるベビーホテルの経営者、園児の募集広告は、当時私が見たベビーホテルそのものです。2万7500円で一人の子どもを預かれるわけがない。こういった実態が再度全国で増えてきていると、各地の保育士さんたちから聞いています。
厚生省に聞いたところ、全国でベビーホテルは716カ所あるとのことです。しかし、厚生省が都道府県から報告を受け把握しているのは数だけであって、実態について報告を受けていません。大臣にお願いしたいのは実態を調査していただくことです。
そして、20年前に園田厚生大臣が答弁したように、「ベビーホテル的な無認可保育所を認可保育所に吸収する」という国の方針を再確認したい。ベビーホテルが増えている原因の一つは、営利企業の参入を認める規制緩和の推進です。私はずっと規制緩和に反対してきましたが、厚生省は規制緩和をすることによって社会福祉法人や公立の保育園も人員増をするなど、時代に対応してくれたらいいとおっしゃる、本音でありましょう。ゼロ歳児の首のすわらない赤ちゃんを商売の対象にしてはいけない。社会福祉法人や公立保育園といった認可保育園の改革をまず実現させるべきであり、規制緩和による営利企業の参入なしに体質改善ができないというのでは、社会福祉法人あるいは公立の保育園は何とも情けない。
子どもを営業の対象にするということはどういうことなのかを真剣に考えていただきたいのです。都道府県がきちんと立入検査ができるような体制がない状況で、規制緩和を進めるのはとんでもないことです。規制緩和はやめていただきたいが、どうしてもやるというのであれば、まだ状況が整っていないのですから延期すべきであると考えます。ご所見を伺いたい。

●丹羽雄哉厚生大臣:
(無認可保育所を)認可保育に吸収するのは大前提ですが、需要と供給の問題もあり、実態をまずつかんでからお答えしたいので、少しお時間をいただきたい。ベビーホテルなど劣悪な施設について実態を調査したいと考えています。その後定期的なチェックを通じて劣悪な施設を排除していきたいと考えています。とても重要かつ関心ももっている問題なので、身分を隠して自ら視察にでかけ実態を把握したいと思っております。

●堂本:
建物が立派であるとか、料金が高いから良いというわけではなく、保育士さんたちが子どもを育てるための理念や使命感をもっているかが重要なのです。大臣の在任中に、無認可保育所での死亡事故が起こらないように、きちんと取り組んで欲しいと思います。

質問が終わり、委員会室を出ると、「今日は熱がこもっていましたね」と同僚議員。「今日は堂本さん、赤い服を着ているからかなあ。」
そうではありません。1年にわたって取材した子どもたちの顔を、走馬燈のように思い浮かべたので、熱がこもったのです。