キャロライン・ケネディ大使の思い出 |
2014年3月9日 |
3月6日の深夜、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使のインタビューを、NHKの「クローズアップ現代」で観ました。 話は半世紀遡ります。 1963年11月22日12時30分(日本時間=11月23日午前3時30分)、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領が、暗殺されました。当時、私はTBS報道局海外ニュース班(後の外信部)で働いていました。 11月21日が第30回衆議院議員総選挙だったので、報道局員のほとんどは局内最大のGスタジオに設置された選挙本部で、開票速報の真っ最中でした。報道局に残っていたのは、私を含めて2人の女性記者で、私たちの仕事は、早朝に予定されていた初の衛星放送を受けることでした。 衛星放送が始まると、いきなり「放送の予定を変更し、ケネディ大統領の暗殺についてお伝えいたします」というアナウンス。撃たれた大統領をジャクリーヌ夫人が必死にかばい、大統領車が疾走する大揺れの映像でした。 私は二階の報道局から階段を駆け上り三階の選挙本部に飛び込んで「ケネディ大統領が暗殺された!」と叫びました。昨日のことのように憶えています。その日からCBSのキャスター、クロンカイトが刻々とレポートする特別番組のフィルムがTBSに送られてきます。こちらも、その膨大なフィルムをチェックし、コメントを書き、放送する仕事が2日間、昼夜を問わず続きました。 最も印象に残っているのは、星条旗に包まれた棺がホワイトハウスを出たところです。ジャクリーヌ夫人とまだ6歳の娘キャロライン、3歳の息子ジョンが並んでいました。ジョンが小さい手で棺に敬礼し、キャロラインが悲しみに耐えている姿が目に焼きつき、今も忘れることができません。2日後、TBSでも2時間半の特別番組を放送しました。 特番の放送を終えた時、私は、さめざめと泣きました。自分の身内でもないのに泣きました。ケネディ大統領の演説は難しく、ニュース原稿を書くのに苦労してきた私です。しかし、その時の涙は、悲しみとか感動といった言葉では表せない、体の芯から湧き上ってくるような思いでした。 去年の11月で、ケネディ大統領暗殺から50年になりました。当時6歳だったキャロラインは57歳になり、駐日アメリカ大使に任命され、30歳だった私は80歳になったわけです。 初めて、「今まで生きていてよかった」と思ったことでした。 |